森と木と人のつながりを考える

【書評】『森をゆく』が河北新報と長崎新聞で紹介されました!

・河北新報 2010年8月22日付け
 60 歳から2年間で日本の百名山を踏破したジャーナリストが、次に見つめたのは「人と森のかかわり」。白神山地や沖縄のやんばるの森から、東京の水源林まで、各地をたずね歩いたルポだ。
 生態系の違うさまざまな森の魅力を伝えながら、「どの森にも人の足跡があり、人とのそれぞれの歴史を刻んできた」と著者。奈良県の吉野林業地の「山守制度」や、屋久島の屋久杉をめぐる伐採と保護の歴史など、現場を歩き、対話することで見えてくる、多彩な森と人の表情が胸に響く。
・長崎新聞 2010年7月18日付け/「水や空」の欄
 鹿児島県屋久島に一度だけ行った。入社して間もないころだから三十数年前だ。友人と2人だったが、途中で脇道に入り込み、樹海の中で一晩過ごした。一年に366日雨が降ると形容される屋久島だ。幸い雨にも遭わず、運良く元来た道にたどり着いた。そんなことを思い出したのは、フリージャーナリスト米倉久邦さんの「森をゆく『人と森のかかわり』を訪ねて」(日本林業調査会)という本に接したからだ。元共同通信社記者で登山家の米倉さんは、定年を機に2年間で百名山を踏破した経験もある森林インストラクターだ。
 北海道富良野の東大演習林から屋久島、沖縄やんばるの森まで、多様で多彩な日本列島の森10カ所に分け入っての森林ルポである。日本の国土の70%は森林だが、地球上の陸地に占める森林は30%にすぎぬというから、確かに森林大国だ。その日本の森が凝縮されているという屋久島は、樹齢千年を超す屋久スギで知られる。屋久スギの長寿の秘密は何かというと、屋久島特有の自然環境だそうだ。花崗岩の傾斜地は土壌が薄く、そこに激しい雨が続くと養分は流される。けれど水分はたっぷり供給されるので、スギはやっくりとしか成長できない環境にあるという。だから劣悪の条件こそ長生きの秘訣、と米倉さんは記している。森は個性的でもある。一読すれば、きっと森を歩いてみたくなるに違いない。(憲)

日本林業調査会
(J-FIC)の本

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